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藤吉郎日記

いつも読んでくれてありがとうございます。山賊のサムライ「とうきちろう」のきまぐれ日記です。

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法螺話もまた楽し



今日は画家の河村立司先生の絵の紹介です。以前、といってもかなり昔ですが、ここ、山口県の「いろり山賊」に

河村立司先生がお見えになられ弊社の雰囲気を絵と文章にしていただきました。

今でもメニューブックに載せて大事にしています。河村立司先生ありがとうございます。

~法螺話もまた楽し~

日刊スポーツ(H.8)  画家 河村立司

 瀬戸内から奥まった国道2号線沿い。西の雄藩、毛利のふるさと、山口県岩国西隣の山あい
に囲炉裏の店『山賊』がある。山賊といっても身ぐるみはぎとりはしない。
 やさしい山賊っ子娘が、1つ350グラムのジャンボなむすびと卓球のラケットほどもある
自慢なブロイラーの炭火焼きを食らえと言う。「おう、九州の親元へ甘えに帰るとな、ほんな
らこの山賊弁当をクルマんに積んでけ。渋滞しても飢え死にせんぞ。」
「大きなぼたもちも草もちもあるぞ。やまめの塩焼きも毛利藩の土産にどうじゃな」
 
 ドライブインの食事に飽きたひとたちも野趣いっぱいの山賊メニューに顔をほころばす。大
きな囲炉裏端にも木立の中にも調理場の煙がたなびき、まさに合戦場のセットさながら。都会
のちまちましたメニューに飼いならされたひとたちも、豪快に構えた山賊砦(とりで)にど肝を
つぶしストレスを吹き飛ばす。旗じるし、戦陣太鼓、ちょうちん、松明(たいまつ)、まんまく、
豪刀、火縄銃、槍、斧、鎧(よろい)、兜(かぶと)、法螺貝(ほらがい)それに古い農具や家具が、
粗削りな山賊館につるされ、ならべられ、外国の客も目をくるくる。
 巨大なむすびを両方からかじるアベック。地酒に酔ったお父ちゃんがブロイラーに挑戦。幼
児が、うんうんうなりながら草もちにしがみつく。

 客は木戸口で食券を買い、メモに名前を書いて渡しておく。しばらく茶を飲み、山の気に和
んでいる。やがて「○○さ~ん」と呼び声。「お~っ、ここじゃ~っ」かすりのうわっぱを着た山
賊娘が食膳をホラホラエッサと運んで来る。山小屋席、囲炉裏席、山肌をを縫う木立席もいつ
しか満席。ならばと、お持ち帰りのメニューから目ぼしいものを求め、小鳥の声もする木立の
奥座敷で酒宴を張る若者グループ。

 友人のKさんの、遠方の客へのもてなしは、いつもこの『山賊』に決めている。小料理屋で
屁理屈をこねるよりも『山賊』での法螺話が楽しい。青天井から粉雪が舞い降りてくる事もあ
る。それはそれで思い出になる。アベックはこたつで足を絡ませ、うどんをすすりながら初詣
の打ち合わせでもするだろう。
 散り重なった木の葉、せせらぎ、小さな滝、古ぼけた板戸、焼けた障子、釜や鍋をのせた竈
(かまど)。都会の子供達には珍しいものばかりだ。
 Kさんの子供達は、はじめて『山賊』の砦を見た時には「怖いよ~」と泣きじゃくった。無理
もない、横浜の団地育ちだったから。
 それにしても『山賊』とは奇妙なネーミングだ。これを真似て『海賊』と名づけた海鮮料理
の店も瀬戸内の島に現れたという。
 『山賊』の看板メニューはなんといっても『山賊むすび』。こいつは巻寿司用の海苔一枚で
ほっこりくるんだ砲丸ダマほどの大きさ。てっぺんに花札くらいのたくあんがちょこんと載っ
ているのもご愛嬌。
 師走と新春の道中弁当は、これだけで安全重宝だ。「エイ、エイ、オーッ」
投稿日:2012年12月21日 10:54 AM カテゴリー:芸術